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さいたま美術展<創発>プロジェクト/Saitama Resonant Exhibitioins Project
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埼玉における美術活動の有機的な連携を目指して、松永康が、随時その状況について思うことを書き連ねてゆきます。
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「二つの扉」ギャラリー・エル・ポエタ、庭園ギャラリー櫻守、9月3日(木)~13日(日)
「井上茉莉子展」ギャラリー・エル・ポエタ、9月22日(火・祝)~27日(日)

 1979年、大宮の氷川神社沿道にギャラリー・エル・ポエタがオープンした。ここを開設したのは、都内の建築事務所で設計の仕事をしていた村田(現・小林)君子さんだった。ちょうど売りに出た物件を購入し、そこを改築して1階を画廊喫茶に、2階を住居にした。これは当時、流行し始めていた建築リノベーションを自ら試みる実験でもあった。
 ギャラリーでは当初から、現代美術作品を展示しようと考えていた。最初に行ったのはエサシトモコさんの個展だった。エサシさんは今、鎌倉住まいだが、当時は大宮市内に住んでいた。彼女の周辺にはなぜか外交的な美術家が多く、このギャラリーにもすぐにたくさんの美術家が集まるようになった。村田さんもまた、ここがそのような場所になることを望んでいた。
 エル・ポエタは、画廊喫茶ではあるが、展示空間と喫茶空間が微妙に分かれているのが特徴だ。壁に絵を掛けるだけでなく、ある程度、その空間を使ったインスタレーション的な展示も可能である。そこで中には、展示空間と喫茶空間を何とかつなげようとする作家も出てくる。
 ふつう美術作品は、画廊や美術館といった無機的な展示空間に飾られることが多い。しかしエル・ポエタでは、空間自体が強烈な個性を持っているため、作品はまずこの空間によって視覚的な洗礼を受けることになる。雰囲気だけの作品ではとうてい太刀打ちできないのだ。その意味でここでは、空間が作品を選んでいると言えるのかもしれない。
 一方で小林文武さんが、贅を凝らした和風住宅を建設し、「庭園ギャラリー櫻守」という名で画廊をオープンしたのは2001年のことだった。小林さんは代々、大宮公園の桜を管理する家柄に生まれた。若いころから美術に親しみ、いつからか作品を買い求めるようになっていた。
 このギャラリーでは最初、川村親光、小川游、塗師祥一郎といった県内の大御所の展覧会を開いていた。しかし、間もなく手詰まりとなり、小林さんは、近所にあったエル・ポエタの村田さんに、企画に関して協力を仰ぐこととなった。
 村田さんはこちらでも、やはりできるだけ現代的な美術作品を紹介するよう努めた。最初は違和感を持っていた小林さんも、そうした作品を見続けるうち、具象画特有の押し付けがましさがなく、かえって心を和ませる抽象画があることを知るようになった。
 最盛期には展覧会だけでなく、井上尭之氏にギター演奏を頼んだり、名だたる神社の神職や巫女さんたちを呼び大がかりな雅楽の演奏会を催したりと、さまざまなイベントも行った。しかしこの経済的な低迷を受け、その賑わいもここ数年は差し控えるようになった。
 現在は作家を厳選し、年に2回ずつ展覧会を開いている。「貸しスペースにするなら閉じておいた方がよい」という言葉に、小林文武さんの文化に対する自負を感じる。ちなみにエル・ポエタの村田さんは、今は姓が小林に変わり、引き続き2つのギャラリーの企画に携わっている。
 ところで9月の前半には、エル・ポエタと櫻守の同時開催で徳永雅之さんと馬場健太郎さんによる「二つの扉」展が、そして後半にはエル・ポエタで井上茉莉子さんによる日本画の展覧会が開かれる。徳永さんはこちらの画廊で何度か展覧会をやっているが、今回は馬場さんとの初めての2人展となる。関連イベントも多く用意されており、中でも櫻守の建物の施工管理者によるレクチャーは、小林文武さんのこだわりを知るうえで貴重な機会となるだろう。

(090715取材)

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