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さいたま美術展<創発>プロジェクト/Saitama Resonant Exhibitioins Project
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埼玉における美術活動の有機的な連携を目指して、松永康が、随時その状況について思うことを書き連ねてゆきます。
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「金子健二遺作展Ⅲ」ギャラリー健、8月23日(日)~9月6日(日)
「てれどろ特別展」ギャラリー健、9月13日(日)~27日(日)

 8月から9月にかけて、中浦和駅前にあるギャラリー健では「金子健二遺作展Ⅲ」が開かれる。この画廊で行われる同氏の遺作展の第3期目である。
 金子健二さんは1948年、宮城県に生まれた。東京藝術大学大学院彫刻専攻を修了後、現在の場所に共同アトリエとして「浦和造形研究所」を開設する。彫刻家として活動を行う傍ら、研究所内に子どもの造形教室を開設し、また1987年には大人のための教室も併設した。
 一方で、子どもの造形教育を通して得た知見を生かし、1996年から「臨床美術」と名づけた独自のアートセラピーの研究を開始する。その成果を基盤として2002年には「日本臨床美術協会」を立ち上げ、今日、大きな社会問題となっている認知症などの精神疾患に対して効果的な治療法を提供している。(*)
 さて、浦和造形研究所は現在、子どもの造形教室から大人のための制作指導まで幅広く行う美術造形教室となっている。金子さんはさらに、美大を卒業し美術家を目指すようになった人たちが作品発表できる場を作りたいと考えていた。ギャラリーの開設は、美術のためにさまざまな環境を整備してきた金子さんの最終的な目標だったのだ。
 ところが2007年の11月、目的半ばにして金子さんは逝去する。その意思を継ぎ、翌年の7月、未亡人の清子さんがついにオープンさせたのがこの「ギャラリー健」だった。生前、関わりのあった大勢の人たちによる開廊記念展を皮切りに、研究所の講師たちの展覧会が立て続けに行われた。そして最近は、清子さんの視点で選んだ美術家に展示を依頼しながら、今後はさらにさまざまな人に使ってもらう方法を模索している。
 現在は、美術家の雨海武さんの協力を得て新たな展開を図っている。この画廊の第一の特徴は、何と言っても美術造形教室が経営しているということだ。事業を行うに当たり、講師や生徒たちの力をうまく導引することで大がかりな催しも不可能ではない。また雨海さんは、周辺の文化資源や人的資源を取り込んだ有機的な事業展開も視野に入れているようだ。
 ちなみに「金子健二遺作展Ⅲ」の終了後、9月13日からは「てれどろ特別展」と題して、若手作家たちの企画による実験的な展覧会が行われる。8月15日の平和記念日に、それぞれの人がそれぞれの場所で描いた絵をこの画廊に持ち寄り、一堂に展示するという試みである。美術という言葉を旗印に、ここから何かが動き出す予感がある。

(090710取材)

*「臨床美術」に関する問合せ
株式会社 芸術造形研究所
〒101-0062東京都千代田区神田駿河台2-1 OCCビル7F
電話:03-5282-0210

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