「あんさんぶる」アートギャラリーこはく、9月5日(土)~19日(土)
「恒星展」アートギャラリーこはく、9月20日(日)~30日(水)
関根公子さんは2003年、思い立って、春日部市にアートギャラリーこはくをオープンした。開廊について何か調べたわけでもなく、ある日、突然、画廊を開きたいと思ったのだそうだ。場所は東武野田線豊春駅のすぐそばだった。
関根さんは美術に興味を持っていたものの、音楽方面に進んでしまったため美術を専門的に学ぶ機会はなかった。その後も美術館によく行ったが、好んで見たのは評価の定まった美術家の作品ばかりだった。やがて結婚し、子どもも手を離れ、学校で音楽を教えるようになる。しかし組織に属するのではなく、何か自分でやれる仕事がしたいと思うようになった。
画廊のオープニングは、彫刻家の梅原正夫さんの個展だった。このとき、まだ次の展覧会さえ決まっていなかった。たまたま同じ学校で美術を教えていた画家の小林眞治さんに、急いで次の展覧会を依頼した。抽象画に興味を持ったことはそれまでほとんどなかったのだが、自分の画廊に飾られた小林さんの作品を見て「おもしろい」と思った。
画廊を開いて3年目、それまで使っていた春日部の会場の契約更新ができなくなった。ちょうど軌道に乗ってきた時期であった。そんなとき、さいたま市の大和田駅近くに、自分の作品を飾るために画廊を開いた人がいることを知った。そこがほとんど使われてないことを聞き、2007年、関根さんはそこを借り受けて再スタートを切ることになる。
さて、この9月にはまず「あんさんぶる」展が行われるが、代表の田中正弘さんとは、県立近代美術館で「接点」という展覧会を見に行き知り合った。この展覧会との出会いは、関根さんにとって先端的な美術表現に関心を持つうえで大きな影響があった。こうしたさまざまな美術家との交流を通して、関根さんは美術への関心の幅を拡げてきたのだろう。
9月の後半には恒星さんの展覧会が行われる。彼の作品も県立美術館で始めて知った。絵画、版画、インスタレーションと表現の幅も広いが、さらにパンク・ミュージックをやる元気のよいアーティストである。そのパワーに圧倒されながらも、関根さんはその戸惑いを楽しんでいるように見える。
関根さんはこれからもっと地域に溶け込み、この場所を人々の出会いの場にしたいと願っている。画廊のウィンドウには、いつも自分で作ったアクセサリーを並べている。そのことで、美術の予備知識のない人にもこの画廊に入ってきてもらいたいからだ。
自分の好みは美術家によって作られてきた。美術をやる人たちの、人間としての奥深さに惹かれたのだと思う。これからもこの画廊は、はっきりした方向性を持つことはないかもしれない。むしろ、ここに関わった人々によって作られていくような画廊にしてゆきたいと、関根さんは自らの生き方にこの画廊の姿を重ね合わせる。
(090715取材)
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