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さいたま美術展<創発>プロジェクト/Saitama Resonant Exhibitioins Project
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埼玉における美術活動の有機的な連携を目指して、松永康が、随時その状況について思うことを書き連ねてゆきます。
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 深谷にあるアトリエ<アール・ポシェット>を訪ねた。ここは美術家の伊藤孝さんのアトリエである。
 本棟の1階が版画の工房、2階が絵画の制作室、それにちょっとした作品の展示空間がある。1996年に建てられたメタリックな外装を持つ現代的な建物で、別棟には彫刻の制作場所もある。伊藤さんの住まいはそのすぐ前だ。
 伊藤さんは1947年、広島県に生まれた。美術大学を目指して20才のころから東京に住むようになる。さまざまな美術作品に接するうち、まず版画に興味を持つようになった。版画は単色による制作が多かったが、やがて色彩も使いたくなりガッシュによるドローイングを開始した。また書の持つ即興性にも魅力を感じ、縦横に走る流麗な線が画面に取り入れられようになる。
 80年代の前半、結婚を機に深谷市に移り住むこととなる。ところが埼玉には海がない。自宅の前に広がるのは荒涼とした葱畑ばかりだ。心が晴れない日など、生まれ育った瀬戸内の海と空が無性に恋しく思われるようになった。
 そんなある日、葱畑をぼんやり眺めていると、あたり一面がふと海の景色に見えてきた。表面上は乾いているが、その内には豊かな水分も蓄えられているではないか。これはあたかも緑の海原だ。このころから伊藤さんの作品には、瑞々しい植物のモチーフが多用されるようになった。
 母屋の南側には空き地があり、ここにはハーブや観葉植物等、多彩な草木が生い茂っている。以前は義父が農園をやっていたのだが、亡くなったあと伊藤さんが独学でガーデニングを始めたのだという。
 関東の田畑は、どこもかしこも効率を重視した四角形だ。伊藤さんはそこで、曲線のある有機的な庭を構想した。こうした「人間曲線」を持たせることで、人は人生の起伏を柔軟に受け流せるようになるのではないか。
 伊藤さんは今でも、絶えず自然との関わりを意識しながら制作している。ところがそこに現れる形態は、どこまで具象でどこまでが抽象か判別のつかないものが多い。実物を見ながら描くと、その形にとらわれて本物の印象が逆に薄らいでしまうのだそうだ。伊藤さんの絵の中では、この庭と同じように、植物のエッセンスが思い思いに自生し始めているのだろう。
 今回の展覧会は、2階の展示スペースが中心となる。また、庭を使って植物とのコラボレーションも試みる予定だ。画面の内側で展開していた有機的な世界が、ついにその枠を破り外界に飛び出してくるのかもしれない。

 

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