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さいたま美術展<創発>プロジェクト/Saitama Resonant Exhibitioins Project
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埼玉における美術活動の有機的な連携を目指して、松永康が、随時その状況について思うことを書き連ねてゆきます。
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 東武伊勢崎線加須駅のすぐ目の前に「康良居(やすらい)アトリエ」はある。もともと米蔵として使われていたところで、近くに住む末柄(すえがら)家が所有している。
 かつてこのあたりの土地は、「康良居」と呼ばれていた。そこで先代の末柄章八氏は、自分が持っていた建物に「康良居倶楽部」や「康良居プレイス」などという名前をつけていた。しかし駅前開発が進み、最終的に美術家が使っていたこの蔵だけが残って、誰ともなくここを「康良居アトリエ」と呼ぶようになったのだそうだ。
 先代には千秋さんという子息がおり、金沢美術工芸大学の彫刻科を出たあと、関根伸夫さんのアシスタントをしながら茨城県の真壁で石を彫っていた。1980年代に入って間もない頃、ここを共同アトリエとして貸し出すことになったため、千秋さんは予備校時代の知り合いに声をかけた。そして、6つある部屋のうち1号室に2人の画家、5、6号室に9人の彫刻家が入ることとなった。
 間もなく1号室を使っていた人たちが退室したため、1984年に、江川夏樹さん、関井一夫さん、田中俊介さん、藤田政利さんらが入居した。彼らは東京芸術大学鍛金科を卒業し、ちょうど制作のための場所を探していたところだった。その後、1号室には大塚武司さんと織田このみさんが加わり、現在は6人で使っている。
 一方で彫刻の部屋も少しずつ人数が減り、今、残っているのは木彫をやっている濱崎茂さんだけとなった。濱崎さんは、1980年代から90年代にかけて神田のときわ画廊で頻繁に発表していた人だ。そして空いた6号室は、1号室の人たちの作品置き場となった。
 一方で2号室は、1980年代後半から工芸会社の下請け作業で使われるようになっていた。折からの好景気を受けて造形物の発注が次々と舞い込み、一時は大勢のアルバイトが集まってきた。そしてバブルがはじけると、ここにはまたもとの静けさが戻ってきた。
 その後、空いたままになっていた2号室に2005年から入居したのが、金属造形をやっている江原愛さん、細田尚美さん、鈴木真由美さん、山崎美智子さんの4人だった。間もなくそこに福地秀幸さんが加わり、昨年は銀座のギャラリーSOLで「康良居アトリエ二号室展」も開いた。そして最近、今井由香さんが入って総勢6人となった。
 4号室には国際ガラス学院を卒業した守屋孝浩さんがいる。試験管やビーカーなどを変形させ不思議なオブジェを作っている。
 当初、ここにいたのはほぼ同世代の人たちだったが、現在は20代から60代まで幅広い層が利用している。金属造形関係が多いが、作っているものはみなバラバラだ。さらに、それぞれ自分の都合に合わせて来ているので、全員が顔を会わせることもほとんどない。
 メンバーが親睦を深める唯一の機会は11月の鞴(ふいご)祭だ。このときばかりは、それぞれの友人も誘って無礼講が続く。こうした親交があるからこそふだんから、制作上の問題などに突き当たったとき気軽に意見を交すこともできるのだ。若い人たちにとっては、そこが共同アトリエの最大のメリットだと思う。
 先代が亡くなったあと、連れ合いがときどきようすを見に来てくれたが、昨年、この方も亡くなり、現在はそのお孫さんが後を継いでいる。しかし、実質的な管理は使用者自身に全面的に任された状態だ。
 風景が大きく変わる中、あたかもこの場所だけが時が止まったようにかつての姿を残している。駅前の一等地、その気になれば何にでも転用できる場所だ。そこを美術家のために維持し続けているところに、先代から受け継いだ文化支援に対する強い信念を感じる。


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