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さいたま美術展<創発>プロジェクト/Saitama Resonant Exhibitioins Project
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埼玉における美術活動の有機的な連携を目指して、松永康が、随時その状況について思うことを書き連ねてゆきます。
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明治以降、日本では洋行帰りの美術家が中心となり、首都の東京で文展を基盤に美術界というものを立ち上げた。欧米でやっていることを日本でもできるようにするのが、当時のすべてのリーダーたちの目標だった。そしてそれは、早急に近代化を進めるうえで避けて通れない道だった。
敗戦後は官展が廃止され、多頭化を進めることで美術界の民主化が図られたが、東京が中心であることに変わりなかった。各地で市展や県展などの地方展が開始されたが、中央の団体に所属する美術家がその運営に携わったためその影響力は逆に強まった。こうした序列化の過程で、中央で決められた評価を地方の隅々まで行き渡らせるためのシステムが完璧に整えられたのだ。
一方で、1970年代から活動を開始した現代系の美術家たちは、団体展系とは異なり、発表活動の中心が画廊での個展となった。主な画廊は、団体展と同じく東京などの都市部であったが、そこで評価を得ても彼らが再び地方に戻ることはなく、その後は国際的な場へと羽ばたいていった。1980年代から始まる実体を欠いた経済繁栄は、その傾向をさらに強める結果となった。
その後、時代は大きく変化する。いくつかの理由で団体展系の美術家が中央で評価されにくくなり、そのため地方画壇では指導者の高齢化が進んできた。一方で前述のように、現代系の美術家に対しては、地方での発表場所はあいかわらず閉じられたままだ。こうした中で地方では、美術の空洞化とも言うべき状況が起き始めている。
さらにそれからひと時代を経、現代美術の発表形態も様変わりした。少子化により若い世代の美術家には教職への道が閉ざされつつあり、それに伴って貸画廊が衰退してきた。さらに長く続いた経済状況の低迷により、都市部で個展を行ってもそのコストに見合うだけの対価を得ることが難しくなった。
それならばあえて莫大な経費を要する都市部での発表を控え、その分、自ら住まう地域内で作品を公表することに新たな意義が見出せないものか。地域の美術愛好家もまた、自ら作品を発表することよりも、優れた作品の鑑賞へと関心を移してきている。地域の現代美術家たちを公正に紹介することができれば、美術に対する新たな時代の要請に応えられるのではないか。
特に埼玉には、他の地方にも増して国際的に活動する美術家が多く在住している。彼らは東京都内および海外で作品を発表してきた作家たちだ。しかしながらこれまでは、県内でその存在を知られることがあまりなかった。これだけの文化資源を抱えながら、公立美術館を含む行政は宝の持ち腐れをしてきたのだ。
このプロジェクトの狙いは、一義的には美術家と愛好家を生活の場で出会わせることである。しかしその波及効果は、美術の内部にとどまらない。身近な場所で活動する美術家を紹介することで、住民の間に一種の地縁意識を醸成できるだろう。さらに、地域の美術家への関心が高まることで住民が居住地域への誇りを高め、より質の高い地方自治を行う基盤にもなると思う。
現代美術がもたらすこうした地縁関係は、かつてのように閉塞へと向かうものではなく、国際的視野へと拡大していく方向性を持つ。なぜなら現代美術は、国際性と地域性とを同時に併せ持っているからだ。近い将来、地域社会は国の枠を超え、海外の諸地域と直接、交易を展開させるようになるだろう。そこで現代美術が媒介となることで、無味乾燥な経済交流に加え、人間的な切磋琢磨のある間地域的な文化交流が可能となるに違いない。(つづく)

 


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