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さいたま美術展<創発>プロジェクト/Saitama Resonant Exhibitioins Project
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埼玉における美術活動の有機的な連携を目指して、松永康が、随時その状況について思うことを書き連ねてゆきます。
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ケイコさんの生い立ちからバリでの生活の話まで、3時間余りの時間があっという間に過ぎた。帰りはケイコさんのお迎えの車でホテルまで送ってもらった。その途中、王家が所有するプリ・ルキサン美術館に寄り、翌日オープンするという展示室の準備作業を覗かせてもらった。
中庭では、まだ楽団員がアトラクションのためのリハーサルをしている。一晩中でもやっていられそうな、マッタリとした雰囲気だ。会場でロイヤル・ピタ・マハを経営しているプットラー氏を紹介され、図らずも翌日のレセプションに招待してもらえることになった。彼はこの美術館の経営者でもあったのだ。
午前10時からレセプションが始まる予定だったので、翌朝、私は少し早めにプリ・ルキサン美術館に行った。どのくらいのタイミングで行ったらよいかケイコさんに聞いたところ、これは公式行事なので時間どおりに始まるはずだから、少し早めに来た方がよいと言われていたからだ。ところがまだほとんど人が来ておらず、とりあえずオープンテラスの待合所に通された。
11時を過ぎてようやくアトラクションの民族舞踊が開始された。11時半からスピーチ。それがまたなかなか終わらず、5人すべてが話し終わったのは12時半近く。それからテープカットをして会場に通された。料理も用意されていたのだが、午後からの予定があったので私は午後1時ぐらいに会場を出た。やはりインドネシアの時間だった。
この展示室は、2005年に設立したPhilip Kotler Center for ASEAN Marketingの事業の一環として作られたという。フィリップ・コトラー氏は、ピーター・ドラッカーと並んで日本でも知られる経営学者だ。「Museum of Marketing 3.0」という展示室の名は、彼が昨年著した『Marketing 3.0』から採られている。
この本の執筆には、インドネシアのヘルマワン・カルタジャヤ氏が共著として加わっている。同展の監修者としてこの2人もレセプションに出席していた。カルタジャヤ氏がプットラー氏の一族に働きかけて、この展示室の建設が実現したらしい。ちなみにコトラー氏は、このレセプションの前日に80歳の誕生日を迎えたそうだ。
『Marketing 3.0』の中でコトラー氏は、これまでのマーケティングの潮流が、製品中心主義の「マーケティング1.0」から消費者中心主義の「マーケティング2.0」へと変化してきたことを述べる。その上で来たるべき「マーケティング3.0」は、人間中心主義になると予測する。そこでの人間は、価値の創造に対し多元的かつ能動的に関わろうとする存在として語られる。
そのようなマーケティングを実現するには、社会的責任を果たすため、企業も環境や健康、社会問題等に積極的に取り組まなければならない。実際、いくつかの先進的な企業では、すでに創造性や参加意識、コミュニティ意識といった、顧客の深層的ニーズを満たすための製品やサービス、企業文化を提示し始めている。そしてこのプリ・ルキサン美術館もまた、これまでの展開の中でバリの文化を体系化しながら、同時に観光資源としての商品価値を高めてきたと言う。
 展示室には、美術館のこれまでの歴史や、マーケティング3.0を実践している企業の紹介資料等が展示されていた。会場をスクリーンで切り分け、有機的に導線を付けた現代的なレイアウトだ。人がいっぱいで個々の内容はよくわからなかったが、上記のような趣旨は極めて興味深いものだった。(つづく)
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