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さいたま美術展<創発>プロジェクト/Saitama Resonant Exhibitioins Project
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埼玉における美術活動の有機的な連携を目指して、松永康が、随時その状況について思うことを書き連ねてゆきます。
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「さいたま美術展<創発>プロジェクト」は、埼玉県内で毎年9月に行われる現代美術の展覧会を紹介する事業だ。作品の展示場所から、美術家はいかに制作のモチベーションを引き出せるのか。実は私は、その解明をこのプロジェクトの腹案として持ってきた。
今年はこのプロジェクトに飯島浩二が参加することとなった。飯島は初め横浜を拠点に活動していたが、2007年、文化庁の在外研修員としてアメリカに渡る。
5年の滞在を終えて帰国し、その後、縁あってさいたま市で制作を行うようになった。飯島はそこで、これまでの経験を自分なりに形にしたいと思うようになる。そのことで今後の展開が見えてくるのではないかと考えたのだ。
こうした伏線の上に行われるのが「HOLLYWOOD JACK」展のシリーズだ。今年の6月から9月にかけて、横浜市、調布市、さいたま市にある3つのギャラリーを使って作品を展示するという企画である。
「JACK」とは、ハイジャックなどと言われるように、戦略を用いてその場を乗っ取ってしまうことだ。このタイトルからは、アメリカの情報戦略の拠点であったハリウッドに対する飯島の複雑な思いが垣間見える。
まず第1回展は、横浜のアトリエKアートスペースで行われた。実はここは飯島が中学時代から通っていた美術研究所で、今は画廊として運営されている。会場には、かつて乗り回していたバイクや壁画制作に使ったスプレー缶、アメリカ滞在中に制作した写真やオブジェなどが所狭しと押し込まれた。そこはさながら、飯島のこれまでの歴史を集約させた記憶の庭となった。
第2回展となったプラザギャラリーは、かつて学んでいた武蔵野美術大学からもさほど遠くない。飯島はここで周囲をガラスで囲まれた展示スペースを選んだ。展示物は前回とほぼ同様で、見る者は歩きながらそれらを体感する。しかし会場を一歩出れば、その全貌を外から見渡すこともできる。この展示を通して混沌とした記憶の集積を相対化し、改めて見つめ直したいという意図が感じられた。
シリーズの最後となるのが今回のノースギャラリーでの展示である。2008年に開設したばかりのさいたま市北区役所の中にあり、飯島にとっては縁もゆかりもない場所だ。艶やかな板張りの床から4mもある純白の壁が立ち上がり、無味無臭の美術展示室といった観がある。
ここでは展示物に加えて、連日、作品の制作を行うと言う。1、2回展を通して飯島は、自らの歩みの回顧と解体、そしてその相対化を試みてきた。それならばこの場においては、いよいよ自分自身にとっての美術の再構築が始まるのではないか。
物質文化が生み出したこの空間で、個人的な思いを引きずった展示物は何の紐帯もなく浮遊させられる。そこに立たされた美術家は、自分しか頼ることのできないリング上の闘士のようだ。飯島はそこで、いったいどのような戦略を持ってこの場を乗っ取ろうとしているのだろう。

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