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さいたま美術展<創発>プロジェクト/Saitama Resonant Exhibitioins Project
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埼玉における美術活動の有機的な連携を目指して、松永康が、随時その状況について思うことを書き連ねてゆきます。
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 12月5日、「西川口プロジェクト」を見に行った。この催しは、西川口駅周辺の商店街を使って行われた美術展である。川口には多くのアジア系外国人が居住している。そこで、「地域に在住するアジア人にたいする新たな考え」を提案し、「アジア人との交流」や「アジア人について考える、知る」ための契機にしたい。チラシにはこのような趣旨が書かれていた。
 この催しを企画したのは、川口でmasuii.R.D.Rという画廊を運営している増井真理子さんだ。この事業を始めるきっかけになったのは、2005年と2007年にこの画廊で「アート記念日」という展覧会を行ったことだと言う。これは、ワークショップと並行させて展示を展開させたり、国を超えて相互に展覧会を行うといった、かなり実験的なプロジェクトだった。外の世界とつながりながら画廊の展示が成長していくというダイナミズムに、増井さんは強く心を引かれたらしい。そして、川口の地域性へと向き始めた増井さんの視界に浮かび上がってきたのが、そこに住む外国人たちとの間の目に見えない境界線だった。
 そうした関心が、今回の「西川口プロジェクト」へとつながっていくこととなる。川口の地域性とそこに住む外国の人たちの暮らしを、この催しの2つの中心テーマとした。そして、その展開の場所として、外国人が最も多く住
む西川口駅周辺に焦点を当てた。
 川口市と、西川口駅に隣接する蕨市の人口は併せて56万人で、そのうち外国人登録者数は21,000人(平成19年末時点)、人口比は約3.8%となる。全国レベルで言うと、静岡県の浜松市が人口80万に対し33,000人(4.1%)の外国人を擁する日本最大の外国人居住都市である。こう見ると、川口と蕨は、浜松市に迫る外国人集住地であることがわかる。
 さて、その西川口駅の東口駅前通りには「合格通り商店街」がある。近くに有名な学校もなさそうなので増井さんにその名の由来を聞くと、「おめでたい言葉だからでしょう」と極めて簡潔な答え。ところが、その浮き足だったネーミングとは裏腹に、実際に歩いてみると地に足の着いた趣のある店が多い。
 増井さんたちは、まずこの合格通り商店街の商工会の協力を得て会場探しを始めた。自ら会場の提供を申し出てくれた理事さんもいるし、出品者が展示を希望して了解してくれた店もあった。どの店主も「美術のことはよくわからないが、理事さんたちがやるというなら」といった感じで快く了承してくれた。
 まず西川口駅の西口の、かつて風俗店だった大槻ビルの空き室に入ると、そこには丸山芳子さんの、写真を基にしたたくさんの人物像が並んでいる。東口に移り、丸和不動産ビルの外壁には、あらかわあつこさんの
垂幕の作品。同じビルの2階に上がると、応接間を使った陳維錚(タン・ジュイチェン)さんの作品があった。
 合格通り商店街へと進むと、吉村屋寝具店のウィンドウに崔誠圭(チェ・ソンギュ)さんが、大東亜戦争を正当化した岩間弘氏の著作を引用している。紳士服のコナカの試着室には、既製品を使った金侑龍(キム・ユリョン)さんの作品。もみじという韓国料理店には、ワークショップで作られたヒサヨシさんの万華鏡。三美堂雑貨店には山田純平さんのテレビモニター。ライブハウスハーツの田中大介さんの作品は、インターネットを使って展開していくものだ。
 この日はあいにく雨空で傘をさして回らなければならなかったが、それほど苦には感じなかった。散策がてら見て歩くのにちょうどよい作品数と距離である。(つづく)


西川口プロジェクト
会期:2008年12月1日(月)-7日(日)
会場:西川口駅周辺の商店街店舗、空きスペース、masuii R.D.R gallery等
出品者:丸山芳子、陳維錚、あらかわあつこ、山田純平、田中大介、チェソンギュ、金侑龍、ヒサヨシ、Lynn Lu、福島佳奈

トーク
会場:masuii R.D.R 参加費:無料 定員:20名(先着順)
■12月5日(金) 19:30-21:00
「アーティストからみた西川口について」講師:陳 維錚、丸山芳子(参加アーティスト)
「誰にでも分かるコミュニティアート」講師:特定非営利活動法人コミュニティアート・ふなばし理事長  下山浩一 
■12月6日(土) 19:30-21:00
「商店街×アートプロジェクト」講師:現代美術製作所ディレクター 曽我高明 

事務局 アート記念日実行委員会
埼玉県川口市幸町3-8-25-109
048-252-1735
http://nishikawaguchi.web.fc2.com/nishikawaguchigallery.htm

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