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さいたま美術展<創発>プロジェクト/Saitama Resonant Exhibitioins Project
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埼玉における美術活動の有機的な連携を目指して、松永康が、随時その状況について思うことを書き連ねてゆきます。
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 さて、同展の中核をなす小野寺さんであるが、以前、紹介した川越の「あるってアート」展のアート・ディレクターでもあり、また埼玉県立近代美術館で行われている「CAFネビュラ」展の事務局も行っている。小野寺さんが、どのような生活をしながら毎年これだけの展覧会をこなしているのか、私にはどうにも想像できない。しかも、そこに奥さんも加わり、家族総出でこれらの催しを支えているらしいのだ。
 小野寺さんは、柔和な輪郭線と表面処理を持ち味とする石彫家である。「母石」「双太母」といった題名は、見る者に母性や豊穣さといったイメージを喚起させる。一方で、「埼玉美術の祭典」の事務局を受け持つようになってからは、同時に優れたコーディネート能力を発揮するようになった。ここで、この国際野外の表現展を支えてきた小野寺さんの活動の一端を振り返ってみたい。
 1971年、東京造形大学彫刻科に入学した小野寺さんは、大学と研究科を通して8年間そこに在籍することとなる。その間、同大の教員だった大成浩さんが中心となり、大学のある八王子市で八王子野外彫刻シンポジウムが開始され、その手伝いをすることになった。この頃から各地で野外彫刻展が一斉に行われるようになるが、八王子のシンポジウムがその口火になったと言われている。
 1980年代に入ると折からの好景気に突入し、地方自治体による野外彫刻の設置事業が一種のブームとなる。公園や公共施設には軒並み彫刻作品が置かれ、また商店街や住宅地に彫刻を置く「彫刻のある街づくり」構想、さらに道路の修景のために彫刻作品を延々と置いていく彫刻ロードなるものも出現した。こうした受注制作をこなしながらも小野寺さんは、彫刻が単に景観づくりの道具としてしか捉えられていないことに疑問を抱くようになった。
 大学を出たあと、小野寺さんは県立新座高校で美術科の非常勤講師をしていた。そこで同僚だった根岸和弘さんに、1979年から「埼玉美術の祭典」への参加を誘われた。同展はその前々年に浦和の埼玉会館で始められ、絵画や彫刻、書や工芸といった枠を取り払って領域横断的な展示を行い、美術団体展の新たな方向性を打ち出していた。
 埼玉では戦後、県内で美術家を志す人たちを対象に埼玉県展が行われるようになった。県展は県教育委員会の主導で始められ、主に美術教師たちが現場の管理運営を行っていた。そして1970年代に入ると、中高の美術教師の間では、県展に出品することが暗黙の了解事項となっていた。
 ところが県展の、特に絵画部門では、高田誠氏や渡辺武夫氏といった日展系の美術家が中枢を担っており、具象系の応募作品が優遇される等、選考基準に一定の方向性があった。日展の絵画部門自体が、そもそも具象画の発展を標榜していたからである。そのため美術教師の間では、県展向きの作品を制作している人とそうでない人の差が表面化してきた。日本の美術教育は制作指導が中心だったため、教師にも制作技能の高さが求められ、その結果、県展に出品していない美術教師は自ずと正当な評価を得にくいという状況が起こったのである。
 1960年代に埼玉県内で前衛美術運動を展開させていた五月女幸雄さんもまた、そうした美術家兼任教師のひとりだった
五月女さんは前衛時代からの人脈を活かし、こうした不遇な教師たちを集めて埼玉の第二県展とも言える「埼玉美術の祭典」を立ち上げた。そしてその存在を広く知らしめるため、小野寺さんのような若手の美術家が数多く動員されたのだ。(つづく)
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