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さいたま美術展<創発>プロジェクト/Saitama Resonant Exhibitioins Project
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埼玉における美術活動の有機的な連携を目指して、松永康が、随時その状況について思うことを書き連ねてゆきます。
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 そして今年も、例年どおり同展は実施された。ただひとつ、私にとって特別な想いがあった。それというのは、海外からの出品者の窓口となっていた城下さんが、この年の2月に急死していたことである。
 城下さんは1980年代から美術家としての活動を始めた。比較的遅いスタートだったが、その初期から一貫して自然環境をテーマにした制作を行っていた。だからその後、野外での発表を積極的に行うようになるのは自然な流れだった。野外展は当時から各地で盛んに行われていたが、城下さんのように環境問題と絡めて制作を行っている作家はまだ稀であった。
 1996年、城下さんはスウェーデンで行われた野外美術展に参加した。そこには、環境保護に対して高い意識を持ったドイツのアーティストが数多く出品していた。憲法の中に「自然を守る責任」について盛り込むなど、ドイツ政府は早くから環境問題への取り組みを開始しており、芸術家にもそうした規範意識が行き届いていたのだ。彼らとともに活動を行う中で、城下さんは自分が目指していたものが間違いでなかったことを強く確信した。
 これを機に城下さんは、水を得た魚のように海外の野外美術展への参加を開始する。また国内の展示でも、自然との共存を意図した作品を次々と発表するようになった。1998年に環境保護に関する京都議定書が発表されると、地球温暖化という切迫した事態が日本でもにわかにクローズアップされる。そして野外展に出品する国内の美術家たちの間にも、自然環境を意識した表現が目立つようになってきた。
 そうしたところへ飛び込んできたのが、自然に恵まれた比企丘陵にある東京電機大学鳩山キャンパスでの野外展の話だった。海外で優れた活動を展開している美術家たちを今度は日本に呼びたい。そして日本の人たちにも、美術を通して自然環境についてもっと考えてもらいたい。城下さんの海外での活動はいつしか、自らの資質を高めるためのものから、日本に紹介すべき作家を探すためのものに転換していった。
 ところで私が初めて城下さんの作品を見たのは、1990年の多摩川野外美術展に出品した「地球を食べちゃったのは誰」と題した作品だった。円形のアクリル板を等間隔に重ねて大きな球体を作り、その一段一段に、絵具をチューブから絞り出したような色とりどりの陶のオブジェを並べていた。タイトルとその形から連想して思わず「ウンコみたいですね」と言ってしまい、初めて会った城下さんに苦笑されたのを覚えている。今、思えば、地球環境の話でもしておけばよかったと思えてならない。
 城下さんは、1994年の秋から95年の春にかけて、日高町にあったギャラリーぐばくの前の田んぼを使い、田尻秀樹さんとコラボレーションを行ったことがある。田尻さんは廃材を用いた表現を長く続けており、城下さんと同様、資源のリサイクルに対して深い関心を持っていた。その展覧会の記録集に寄せた私の言葉の中に、「考え方の近い人達ほど、シビアなぶつかり合いになる」という言葉が見られる。志向性が近いゆえにほとばしる2人の鮮烈な火花に、私はたぶん圧倒されていたのだと思う。城下さんはそれほど真摯な人であった。そして、その城下さんの死をさらに衝撃的なものとしたのは、田尻さんもまたその前々年に急死していたという事実
であった。
 支柱を失っても展覧会はまた巡ってくる。それは刈り取られた草がまた生えてくるようなものだ。展覧会が自然に回転し始めるにつれて業務は細分化され、今、多くの人たちによって受け継がれている。(つづく)
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