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さいたま美術展<創発>プロジェクト/Saitama Resonant Exhibitioins Project
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埼玉における美術活動の有機的な連携を目指して、松永康が、随時その状況について思うことを書き連ねてゆきます。
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「田代絢子銅版画展」ギャラリー麦、9月17日(木)~27日(日)

 長く市役所勤めをしていた栗原梅次さんは、2005年に脱サラし、新狭山駅前に喫茶店を兼ねた「ギャラリー麦」を開設した。地元の絵画サークルの人たちの発表の場として会場を提供するとともに、実績のある美術家の展覧会を定期的に開いている。ここでこの9月に行われるのが、田代絢子さんの展覧会である。
田代さんは福岡県出身の銅版画家だ。佐賀大学教育学部特設美術科専攻科修了後1970年に渡仏する。同じ時期にフランスに来ていた画家の斎藤輝昭さんと2年後に現地で結婚し、1985年までここで生活することになる。
 渡仏後間もなく、田代さんは、ヘイター(S.W.Hayter)が主宰する「アトリエ17」を訪れる機会を得た。ヘイターは画家であると同時に、版画の世界を大きく革新させた版画家でもあった。かつてはカルダー、ダリ、エルンスト、ジャコメッティ、ミロ、ピカソ、シャガールといった著名な美術家がこのアトリエで制作を行った。そんなことも知らぬままそこで版画の奥深さに魅入られた田代さんは、その場で銅版画をやることを心に決めた。入所するのに1年待たされたが、その後の5年間、ここで学んだ版画の技術と精神は何物にも代えがたい財産となった。
 版画には、何もないところから像が現れてくる楽しさがある。版から紙をはがすときのあの緊張感と期待感が、これまで田代さんを版画制作の虜にさせてきた。また1点の作品を複数の人でシェアできるのも魅力で、そこには独占ではなく共有することの喜びがある。
 さて帰国が目前に迫ったころ、友人の紹介で、たまたま狭山市にアトリエを持つ人と会った。そこで田代さんたちは、帰国後そこを借りて住むことにした。狭山を拠点として東京で個展を行う他、それぞれの出身地である福岡県および福島県の画廊でも精力的に展覧会を行った。
 1999年、入間市に「アトリエキャトル」という共同アトリエができ、周辺に住む美術家がここで制作を行うようになった。田代さん夫妻もその当初からのメンバーである。ここには埼玉県西部地域の美術家がよく訪れる。田代さんは、この場所を基盤に、今後、この周辺に住む美術家たちと緩やかな連携を結んでゆきたいと考えている。

(090717取材)

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