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さいたま美術展<創発>プロジェクト/Saitama Resonant Exhibitioins Project
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埼玉における美術活動の有機的な連携を目指して、松永康が、随時その状況について思うことを書き連ねてゆきます。
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そして物語は始まった(その1)
2012/07/06 (Fri)
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昨年の11月、川越の蔵づくり家屋を使って「蔵と現代美術-響きあう空間-展」が行われた。その記録集に雑感を掲載したので転載させていただく。
私たちが生活する場には、歴史の中で刻まれてきた記憶がある。そして美術家は、作品が置かれる場の記憶を探し出し、同時代の視点によって形を与えてゆく。私たちはそこに出現した思いもよらぬ造形物を通して、その場が秘めていた別な一面を垣間見ることになる。言い換えれば、美術作品がそこをひとつの演劇的な空間に変えたのである。
川越は蔵造りの街として全国的に知られている。実は本来の川越の街並みは、明治期に起った大火によりその大半を失った。しかし、焼失を免れた建物が伝統的な土蔵造りだったことから、後の復興に当たり人々は競って土蔵造りを採用するようになる。そのことで今日の川越の街並みが形成されたのだ。さらに大戦中も砲火を逃れたため、この街並みはそのまま生き残った。
そして1971年、江戸期に建てられた大沢家住宅が国から重要文化財の指定を受け、さらに旧小山家を市が買い取り蔵づくり資料館として公開するようになる。こうした中で、市民の間でも蔵の重要性が認識されるようになり、その後、さまざまに展開した市民運動の力によって川越の蔵造り商店街は全国的に知られるようになったわけだ。
その川越の蔵造りの建造物を使い、現代美術作品の展示会が行われた。そこでは店舗や住居、物置や中庭といった多様な空間の中で展示が展開された。和室に立てられた屏風型の作品は何十年も前からそこにあったように佇み、屋根裏部屋に並べられた樹皮のオブジェは何ものかを鎮魂するように浮かび上がっていた。作品は決して具体的な意味を示しているわけではない。それにもかかわらずそれらは、置かれた場と呼応しながら見る者の中でさまざまな物語を醸成させていたのだ。(つづく)
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【転載】
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