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さいたま美術展<創発>プロジェクト/Saitama Resonant Exhibitioins Project
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埼玉における美術活動の有機的な連携を目指して、松永康が、随時その状況について思うことを書き連ねてゆきます。
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ところで、画廊や美術館以外の場所を使って美術作品を展示するというのは、今に始まったことではない。1950年代にはすでに公園などを使って、現代美術家による実験的なイベントが行われていた。彼らは既成の展示空間から離れることで、人間が表現することの本質を問おうとしていたのだ。また、日常空間の持つ固有の歴史や環境との関わりの中で作品のテーマを考える美術家も現れる。こうしたやり方はその後、サイトスペシフィックと呼ばれる表現方法として定着していく。
さらに1990年代に入ると、市街地の商店や公共施設などでも積極的に美術作品の展示が行われるようになった。ゲント現代美術館館長だったヤン・フートが、1986年にベルギー市内の民家を使って行った「シャンブル・ダミ」というプロジェクトがそのきっかけだった。フートは1991年、石川県鶴来町(現・白山市)で蔵や醸造所、家屋、駅舎などを使った展示を行い、これを機にわが国でもこの方式によるプロジェクトが広まっていった。
川越の蔵空間では、これまで文化的なイベントが行われることはあまりなかった。音楽や舞踊等の舞台芸術には、利用上の制限が多すぎるのだろう。しかし一方で、現代美術にとって蔵空間は極めて魅力的な存在となる。こうした歴史的な構造物に対して、美術家たちは常に現代的視点から読み直しを行っているからだ。この展覧会は、個々の美術家のユニークな作品表現を通して、蔵の記憶とその今日的意義を浮かび上がらせるものとなった。
川越の土蔵の多くは現在、商業用、観光用に改修され、本来の機能や歴史性が見えにくくなっている。そうした背景を知らない者にとっては、買い物と散策を楽しむだけで充分なのかもしれない。しかしこの街の魅力を維持しさらに発展させていくためには、住む人と訪れる人の間で新たな物語を紡ぎ出すことが有効であろう。それは、そこにやってきた人々を、知らぬ間にその劇の登場人物に仕立ててしまうような何かである。
今回行われたこの小さな試みは、今後どのような物語へと展開していくのか。美術にはそれを仕組む力があると思う。物語はすでに始まっている。次はこの劇場に入ってしまった私たちが、それぞれに自分自身の役柄を選び取っていく番だ。(おわり)

『2011年「蔵と現代美術-響きあう空間-展」第1回展記録』(2012. 2、「蔵と現代美術展」実行委員会)より転載

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