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さいたま美術展<創発>プロジェクト/Saitama Resonant Exhibitioins Project
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埼玉における美術活動の有機的な連携を目指して、松永康が、随時その状況について思うことを書き連ねてゆきます。
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 川口市立アートギャラリー・アトリアとmasuii R.D.R ギャラリー+ショップで小原典子さんの作品を見てきた。アトリアの方は「ワークショップコレクション-光のらくがき」展の3人の出品者のうちの1人で、masuiiは「ネムリノカタチ」と題された個展である。
 アトリアの展示は、暗室の天井からたくさんの糸が下がり、そこにさまざまな形をした小さな造形物が無数に結び付けられている。造形物には蛍光塗料が塗られており、それらがブラックライトに照らされ空間の中に妖しく浮かんでいる。
 またmasuiiの展示は、透明なアクリル板の上に蛍光塗料の斑点で描かれた人物像のインスタレーションだった。3枚ずつ重ねて組にした人物像が、床に置かれまた天井から吊られている。そしてそれらは、やはり暗室の中でブラックライトに照らし出される。人物像の重なりは、見る角度によって少しずつ形がずれてゆき、異なる動作をしているようにも見えてくる。
 最初にアトリアの展示を見たとき、まずこの作品を作るのに要した労力に圧倒された。天井から糸を1本ずつ吊っていく作業もさることながら、部屋の暗さを保つため、白い壁の上に黒の模造紙が余すところなく張り巡らしてあるのだ。この作業のため、小原さんはまる3日をかけたという。
 しかし一方で、こうした作業的な部分ばかりが目に入ってしまい、実際のところ、この作家が何を表現したいのかよくわからなかった。ところが、引き続きこのmasuiiでの展示を見ることで、私の視点は一気に焦点を結んだ。彼女が提示しようとしているのは、人間の存在に対するひとつの見方だったのである。
 仏教には五蘊仮和合(ごうんけわごう)説という考え方がある。世界には遍く5つの気運が漂っており、それらが偶然ひとつに重なり合った時、人という存在が現れるのだという。そしてそれらが離れ離れになるとき、人の存在もまた姿を消してゆく。ここにはキリスト教に見られるような、神と向き合う絶対的な人間像は想定されていない。そうではなく、変幻する事象の中で、さまざまな生き物と同様に生まれてはまた消えていくという、極めて流動的な人間観がある。
 Masuiiに展示されていた、分子のような斑点で構成された人物像は、さらに3つの層に分けられ、ひとつのフレームに収めることのできない人間像を浮かび上がらせる。そういえばこれらの作品は、さまざまな気運の重なりによってぼんやりと影を結んだ、かりそめの人間の姿のようにも見えてくる。こんなことを考えているうち、私はふと先ほどのアトリアの展示を思い出した。アトリアのあの広い空間の中に浮遊していたのは、いまだ見ぬ存在を生み出すために空中に漂っている無数のエレメントだったのではないか。
 近代は、人間をひとつの完結した存在として位置づけようとしてきた。人間として社会に認められるためには、確固としたアイデンティティを持つことが求められた。そしてそれを対外的に示すために生み出されたのが、自己所有という観念である。その人が影響を及ぼすことのできる範囲は、その人の所有物の大きさで規定されるのである。
 しかし今日、先進国に生きる私たちは、そうした信念だけでは生き続けられないことに気づき始めている。自己所有への欲望が無限に広がり、後進国の貧困を増大させながら、世界中の資源を食い尽くそうとしているからである。私たちは所有物を自らのうちで完結させるのではなく、いかに人類の子孫に受け渡していけるのか真剣に考えなければならない時期にきている。
 敗戦を迎え、日本人は西洋式の近代を必死に受容しようとしてきた。美術家もまた、自分だけのオリジナリティを求めて闘い続けてきた。しかし、果たしてこの世の中には、その人だけに属するものが本当にあるのだろうか。今はすでに、もうひとつの自己のありようを模索する時代に入っている気がする。


ワークショップコレクション -光のらくがき-
2008年7月19日(土)-8月24日(日)
川口市立アートギャラリー・アトリア
出展作家:小原典子、木村崇人、吉田重信
http://www.atlia.jp/schedule/index.html

小原典子展「ネムリノカタチ」
2008年7月29日(火)-8月10日 (日)
masuii R.D.R ギャラリー+ショップ
http://www.masuii.co.jp/rdrg-exh.htm

 

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